- カメラ1台でどうして車間距離が分かるのですか?ステレオカメラでなくても良い理由が分かりません。
- 両目で見るから距離が分かるというのは錯覚です。両目で立体で見えるのは視差(パララックス)による感覚です。両目の間隔は6cm程度ですから、数メートル以上の距離では距離の違いが分からなくなります。(昔の戦艦大和で使われていた測距儀は15.5m離した2台の望遠レンズで三角測量して10km以上先の敵艦までの距離を測っていました。)ではカメラ1台でどうして車間距離が分かるのでしょうか。
道路の幅や車線は無限遠の地平線で一点(消点)に収束するという遠近法の原理を利用します。前方のクルマのタイヤが地面に接する位置は、近くになるにつれて無限遠の1点(消点)より下にずれて見えます。消点からどれだけ下にずれるかをカメラのCMOSセンサーで常時観測しているので距離が刻々と分かるという訳です。この方法で80~90m程度の前方車両までの距離測定がリアルタイムに可能になります。 - カラーカメラでなくて、どうして白黒カメラで実現しているのですか?
- 前方のクルマの輪郭認識(左右テールライトや後輪と地面との接点も)や、車線認識は、白黒のコントラストで十分正確に認識可能です。3原色情報の同時処理に必要な高速CPUも必要ありません。
CMOSセンサーの4画素にひとつ赤色に感度を持つ画素を入れていて、夜間のテールライトの赤を精度高く発見する仕掛けを入れてあります。 - クルマの衝突の危険はどうして分かるのですか?
- 前方車両までの車間距離は前述の原理で刻一刻と測定されています。動画で記録される各フレーム間で、距離の変化率が大きいと急接近を意味します。
クルマの輪郭の四角形枠の大きさの変化率も観測し続けて、その急激な変化も衝突の危険として加味します。総合的に判断して衝突の危険が2.7秒以内と判断したら警報音を鳴らします。
自分の車線の左右外側でカメラの視野内に入る複数台を常時観測していますが、衝突警報の対象は自車の車線内の前方車両です。前方に割り込まれると、警報対象のクルマが直近のクルマに自動的に入れ替わります。前方の車が隣りの車線に移ると、警報対象は自分の車線のその先にいるクルマに入れ換わります。 - クルマの車幅は乗用車やバス・トラックで違うのに、どうして車線を越えるタイミングが分かるのですか?
- Mobileyeをフロントガラス内側に取り付ける際は、カメラの左右中心からのずれを入力します。それと車幅のデータで、カメラレンズが左右のタイヤ外側からそれぞれ何cmの位置にあるかを覚えます。この情報でカメラ位置から両車線までの距離が分かり、結果的にタイヤから車線までの距離が分かることになります。車線逸脱警報は車速が時速55km以上の場合に鳴ります。
- 仮想バンパー警報(低速時前方車両衝突警報)はどの様にして鳴るのですか?
- 取り付けの際に、カメラ位置からバンパーまでの距離もシステムに覚え込ませます。カメラからの車間距離が分かるので、バンパーから前の車までの距離も分かります。その距離が指定した距離より短くなったら、仮想バンパー警報を鳴らせるという仕掛けです。仮想バンパー警報で一旦停止しても、その後にクリーピングで再接近したら再度鳴ります。
- 歩行者警報はどうして歩行者や自転車が分かるのですか?
- Mobileyeのビジョン認識は、前方物体の形状からクルマ(乗用車、バス、トラック、オートバイ)と歩行者(人、自転車)を区別して識別します。人と自転車は縦横比の大きい棒状の物体としてクルマと区別しますが、その他の条件も加味します。夜間は歩行者警報は働きません。
なお、歩行者検出は安全のために自車の車線内だけではなく、左右のやや幅広いエリアを常時検出しています。左端車線を走行中に左歩道の歩行者に反応して点灯することがありますし、交差点で右左折する際は横断歩道や歩道を歩いている歩行者を幅広くスキャンすることになるので、赤い歩行者マークが点灯することになります。危険でないときはブザー警報は鳴りません。 - Mobileyeシステムはクルマからどの様な信号を取って利用しているのですか?
- 車速、ブレーキ、右ウィンカー、左ウィンカー、ワイパー、ハイビームの各信号を取っています。
最近のクルマでは、これらの信号がCAN(Controller Area Network)で全部取れる車種もあり、その場合には配線が簡潔になります。全部アナログの信号を取る場合もありますし、CANで取れる一部の信号をCANから取り、残りをアナログから取るミックス配線も可能です。 - Mobileyeシステムは、自分で取り付けが出来ますか?
- 出来ません。
取り付けは専門知識を持ち認定を受けたインストーラーが特別なソフトウェアと機器を使って行う必要があります。 - 前方カメラ以外に、左折時の巻き込み防止の斜め左向きカメラや、後方カメラは付かないのですか?
- 原理的には付けられますが、本製品は前方車両との衝突の危険を検知して運転者に知らせてブレーキを踏んでもらう安全運転補助装置と位置付けています。
動画を表示するにはデータバス幅が狭いのと、動画で運転者を注意散漫にさせないために、表示装置には各種アイコンで示し、危険時にはブザー音で知らせる方法を採用しています。 - 前方を写すカメラなのだから、ドライブレコーダー機能も一緒に持てないのですか?
- 原理的には可能ですが、ドライブレコーダーが左右180度近い超広角の歪んだ動画を記録するのに対し、Mobileyeは左右40度の歪まない広角レンズで距離精度を重要視して設計されています。
別カメラを並列装備するなど今後の課題です。 - どんなクルマにも取付できるのですか?
- ほとんどの乗用車、トラック、バスに取り付け可能ですが、下記に該当するなど、まれに取り付けができない場合もあります。
・カメラユニットの取付範囲に別の機器や取り付けの障害になるものがある場合
・対向ワイパーが採用されている乗用車で、取付範囲をワイパーが拭き取らない場合
・機械式のスピードメーター(ケーブル駆動)の車種など、車速パルスが取得できない場合
・車速パルスが特殊なものでC2-270が正常に認識できない場合
・シグナルをCAN(Controller Area Network)でしか取得できず、かつMobileye社のデータベースにその車両のデータが存在しない場合